降りてた日
「あがった。次、入って」
お風呂の時間。リビングに、肩にタオルをかけた見慣れない男の子がのそのそと歩いてきた。あの佇まい……もしかして、ふみやくん?!
「そうだけど」
目を丸くして凝視していた私の脳内を察したのか、垂れた黒髪の間からいつものけだる気な瞳で肯定される。
「わ、わ、髪下ろしてるふみやくんかっこいいよ! 知的! イケメン!」
「あら、名前は見るの初めてか。良い男だよね、テラくんほどじゃないけど」
「ええ、セクシーです」
それぞれソファでくつろいでいた二人が物珍しげに私を見、頷いてくれる。
「ありがとう。いつもの俺は?」
「髪サラサラ〜! こんな長かったんだね前髪!」
「なあ、いつもの俺は」
「さっきの猿くんは可愛かったけど、ふみやくんは大人っぽくて、でもどこかあどけなくて……いいなあ」
「名前」
「う、うん。いつものふみやくんもワイルドでかっこいいよ。けど……髪下ろしてるのも好きだな〜」
「ありがとう。もっと言っていいよ」
「かわいい」「うん」「素敵!」「うん」「よっ、水も滴るいい男!」「うん」
表情は一切変わらないけど、なんとなく喜んでくれてる気がする。
「褒めるじゃん。それ後でテラくんにもやって♡」
「あっ!ウィンクが素敵です! 私にはもったいない……」
「名前さん、その審美眼、その語彙力。素晴らしいです」
「そ、そうですか? 思ったことを言っているだけですよ……!」
褒めていたのはこちらなのに、天彦さんに褒められてなんだか照れてしまう。褒め上手は天彦さんの方だと思うのだが。
「湯上がりの名前も、良い」
「えっ!」
「依央利、なんか飲み物」
かしこまりました♡とキッチンの方から依央利くんの声がする。
「ふ、ふみやくん」「ん」「い、今の」
「ああ……俺も思ったことを言っただけだよ」
上機嫌そうに微笑まれる。ず、ずるい……!
「あ、ありがとうございます……」
一撃でノックアウトなのでした。ちゃんちゃん。
221026 毎朝セットしてるのかわいい 大瀬くんはまだ心を開いてくれません 理解くんもこの頃は自室で女性の存在に震えている頃だと思います